年越しにみる映画①萩原健一主演『渋滞』

事故後の原発のように四六時中ぷすぷすと毛穴から不満を発散させている男、ショーケン

年の瀬、久しぶりの家族そろっての帰省であっても当然、その道中の陽気なこと! とはならない。

渋滞にハマって身動きとれない車内。その運転席にはショーケン。想像しただけで胃潰瘍になりそうなシチュエーションだ。

ぼくが息子なら家で爆笑ヒットパレードを見る正月を選ぶ。

なんせ、まだ川崎の時点で

「まるで俺が交通費ケチって車にしたような言い方だからさ」「この渋滞は俺のせいかよ!」

とキレかかっているのである。

時折見せる「ちきしょぅ」の発音がエグい。

 

旅館がとれずに車中泊、ナビに不慣れな妻に八つ当たりしているところをあわやトラックと正面衝突、ネズミとり、雪の中を居眠り運転しあわやの大惨事、息子の急病...。

と、まるでショーケンに油を注ぐように数々のトラップが待ち構えている帰省の旅。

 

そんななか、ショーケンに振り回されながらもしっかりと自分の意思を貫き、家族団らんを保とうとする奥さん役の黒木瞳がイイ。

子供が二人もいる奥さん役ながら、イイとこの女子大生のようなファッションもかわいいし、ケンカのあと、ショーケンと旅館の階段で秘め始めしているときにロングスカートから突き出た生足は『失楽園』なんかよりもずっとエロい。

黒木瞳という女優を見直した一本となった。

 

 

テレビに映し出された帰省ラッシュUターンラッシュの様子を「あや〜、ご苦労様だこと」と言いながら楽しむのは故郷である田舎に住むひとの特権である。

この映画のショーケンを見たあとだと誰しもその特権を味わうことができるが、それ以上に「今年の正月は田舎に帰ろうかな」と思わせてくれる、そんな作品である。

 

 

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『渋滞』(1991年)

監督:黒土三男、脚本:佐藤峰世・黒土三男/108分

出演:萩原健一黒木瞳/宝田絢子/湯澤真吾/岡田英次/東恵美子清水美砂緒形幹太中村嘉葎雄犬塚弘/浜村純/小林亜星/かたせ梨乃

 

〜あらすじ〜

家電量販店に勤める林蔵(萩原健一)は正月休みに家族4人で5年ぶりの帰省を計画。旅費を浮かせるため、自宅のある千葉県浦安から故郷の瀬戸内海に浮かぶ真鍋島までマイカーでの移動を選ぶ。12月30日の早朝に出発したらその日の夜には到着すると思っていたが、高速の入口からすでに帰省ラッシュにハマり...。