ドラマ『高校教師』(1993年版)レビュー「第4話 僕のために泣いてくれた」

繭に恋愛感情を持つバスケ部キャプテンの策略にハマり、生徒に乱暴をしたという濡れ衣を着せられた羽村先生。

すべての生徒が授業をボイコットをする中、変わらず笑顔で羽村先生を迎える繭。

二人だけの生物室で雑学を披露する羽村先生と耳を傾ける繭。

「君はどうしてボイコットしないの?」

「お返し。最初に会った時、信じてくれたから」

「でもちょっと変なの。みんなが先生を信じないと、うれしい!」

 

淡い感情をじゃれあわせる二人のもとへバスケ部キャプテンが乱入。

嫉妬の火に焼かれたバスケ部キャプテンは羽村先生に塩酸をぶっかける。身を挺してかばった繭だったが、己の腕に火傷を負ってしまう...。

 

病院の帰り道、別れ際、歩道橋の上での会話。

「生物室でさ、なに訊こうとしたの?」

「ごく素朴な疑問さ。俺のどこがいいのかな、なんて」

きょとんとした顔で、

「わかんない」

「忘れちゃった!」

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元祖ずっきゅん(©乃木坂46 秋元真夏さん)

 

婚約者の浮気現場を目撃してから数日後、羽村先生は婚約者から「腹を割って話し合いたい」という申し出を受ける。

「あなたとの結婚は父に勧められたからじゃなくて、私なりにあなたというひとをわかった上で、結婚する上ではいいひとだと思ったの」

「あなたは私のこと愛してる? あんなところを見てそのまま黙って結婚しようなんて、あなたも結婚は単なる形式だと思ってるだけだと思うの」

「あなたは教授の娘婿になれるというメリット。私はプライベートなことは干渉しないでくれる夫」

「子供はひとりだけ生みます。父のこともあるし。できればその時以外はセックスはなしにしたいの。こんなこというのなんだけど、はっきりいって私、あなたとは感じたことがないの

 

あなたとは感じたことがない。

男を地獄に突き落とす言葉No.1。

別れ話の買い言葉に売り言葉で出た台詞ではない。結婚に向けての話し合いの席で婚約者の口から出た言葉である。ぼくならこの女を殺して自分も死ぬ。

おそらく、この言葉を聞いた時点で羽村先生は婚約の解消を決意したのだろう。

 

傷心の羽村先生が頼りにできるのは今や新庄先生のみである。その日も新庄先生宅ですき焼きを食べるため、スーパーで買い出しをしていると、繭&直子が登場。

男だらけの鍋パが一転、女子高生との夢の鍋パ(お酌もあり)にグレードアップ。

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婚約者の父である教授に婚約解消を告げに行ったその日、羽村先生は研究室に戻れる余地はないこと、そして婚約自体が教授による論文横取りの因果を含めたものであったことを知らされる。

 

ささやかな希望のすべてを失ってしまったその日、羽村先生と繭は約束通り井の頭動物公園でデートをする。

夕日が反射する湖を眺めながら嗚咽まじりに語る羽村先生。

「僕は何もかも失ってしまった。ささやかな未来も。始まりはどうであれ、僕は彼女を。だからあんなところを見たんだ」

「もう何もない。何もないんだ」

傍らの繭も泣いていた。

 

ここでかかる曲は森田童子の「男のくせに泣いてくれた」だけど、僕はこのシーンを見るたびにTHE YELLOW MONKEYの「NAI」を脳内再生している。

 

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何もないあなたと 何もないわたし

燃えるほど愛し合って 結ばれてるのに

キリキリ胸が痛むのは なぜだろう

どこかに消えてしまいそう 今にも

 

公園でチョコを食べて 木もれ日を浴びて

木枯らしの中を走る 長いコートのあなた

幸せだけど 怖いのはなぜだろう?

どこかに消えてしまいそう 今にも

 

二人の背中に描いた 同じ形の

キレイな色の十字架 ならべて眠った

幸せだけど 怖いのはなぜだろう?

すべてが消えてしまいそう 今にも

 

目の前が真っ白に光って あなたが

線だけになってしまう夢見て泣いたの

流れる時と涙 あふれる愛と涙

何もないあなたを ずっと抱きしめて