サウスパーク「You're Getting Old」

サウスパーク』のなかでいちばん好きなエピソードかもしれない。

 

〜あらすじ〜
10歳の誕生日を迎えたスタンは誕生日パーティでクラスメートから誕生日プレゼントをもらう。親友のカイルからは「トゥイーン・ウェーブ」といういま子供たちの間で流行っている音楽CDをもらうが、スタンの母親シャロンは「糞みたいな音楽だから」という理由で息子の誕生日プレゼントを取り上げてしまう。

 

若い頃ロックスターに憧れ、音楽に理解がある(と思っている)スタンの父親ランディはシャロンのやり方に反発する。
「自分も若かった頃、親に好きな音楽を否定されただろ? 君も若いヤツらの音楽が糞に聞こえるほど年をとったんだ」
ランディは自分はまだ年寄りの時代遅れじゃないと「トゥイーン・ウェーブ」のCD聞いてみるが、ヘッドホンから聞こえてきたのは紛れもなく糞の洪水だった。

 

シャロンたち親は結託して子供たちが「トゥイーン・ウェーブ」を聞くことを禁止する。カイルの父親ジェラルドは代わりに「これが本当の音楽だ」とザ・ポリスの曲を聞かせるが、子供たちには耳にゲリグソを流されているようにしか聞こえない。
スタンはシャロンの言いつけを破り、隠れて「トゥイーン・ウェーブ」をダウンロードして聞いてみる。ところが、スタンの耳に流れてきたのは先ほど聞かされたポリスと同様、ビチグソだった。
翌日、登校中にノリノリで「トゥイーン・ウェーブ」を聞いているカイル、カートマン、ケニーの3人。スタンはカイルにだけ打ち明ける。
「もらったCD、全然好きじゃないんだ。何かが起きて糞のようにしか聞こえないんだ」

 

(ちなみに、「トゥイーン・ウェーブ」の音源はYouTubeで聞くことができます)

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スタンはカイルのアドバイスに従い、病院で医者に診てもらうことに。
「音楽だけではなく、前は好きだったポップコーンやロックケーキも今では糞のような味がする」
医者は検査として「トゥイーン・ウェーブ」とボブ・ディランの曲を聞かせるが、スタンの耳にはどちらも糞水を顔面シャワーされているようにしか思えなかった。
「年をとるにつれて好きだったものがクソみたいに感じるようになる。クソのように思えても子供にはクソには見えない。君は何らかのショートを起こしてすべてのものがクソに聞こえ、クソに見えてしまうんだ。治療法はない」

 

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クソをまき散らしながら喋るクソ医者に「皮肉癖」と診断されたスタンは友達の前では気丈に振る舞うも、ゲームに誘われると、
「そんなのクソゲーだろ? たくさんいるキャラと話してボタン押すゲームなんて誰がやるんだ?」
みんなで行ったファミレスでパフェを頼むと、
「俺にはグラスに山盛りのクソにしか見えない」
それならモールに行こうか? という提案には
「クソみたいなものを売りつけるところだろ」
すべてをクソ扱いしたスタンは友達からも見放されてしまう。
そして、スタンの目にはとうとう親友までも喋るクソ人形に見えしまうのだった。

ラストでは、ひとり新しい価値観のなかで生きなければならないスタンの姿がFleetwood Mac「Landslide」をBGMに描かれる。

 

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ぼくがスタンのことを「俺たちのスタン」と呼ぶのはこのエピソードによるところが大きい。
自営業という道を選んでからさらに世の中に「トゥイーン・ウェーブ」が溢れていることに気づいた。
インスタグラムはクソの墓場にしか見えない。
意図的に世の中を皮肉ってるわけでもないのに、どこにいても馴染めない。楽しい時間を過ごしていても、いや楽しいからこそ「帰りたい」と思ってしまう。
そしてひとり空回りしながら自らクソをまき散らしてしまう。

 

10歳の誕生日にクソの世界に足を踏み入れたスタン。

タイトルの「You're Getting Old」どおり、ぼくらは年をとる。そしてパラダイムシフトは経験の数だけそこかしこに潜んでいる。いつ大好物が次の大グソに見えてしまう日がやってきても不思議ではない。

ネタバレになるけど、最後にこのエピソードの後編「Ass Burgers」のスタンの言葉を紹介したい。


「変化とは俺たちみんなに新しいものをもたらす。前とは違うかもしれない。でもそれは少なくとも新しいものだ。初めて尽くしで俺は盛り上がっている」

―スタン・マーシュ