サウスパークが描いてきたアメリカ大統領選③2008年オバマ対マケイン

 2008年11月4日に行われたバラク・オバマジョン・マケイン共和党)によるアメリカ大統領選挙の結果「オバマ勝利」が報じられたのは同日午後10時頃。シリーズ12・エピソード12の「About Last Night…」はそれからほぼ24時間後の翌日10時にテレビ放送された。

 

 放送日が大統領選翌日ということに気づいてからプロットを考えたというこのエピソードは、オバマが4日夜に地元シカゴのグラントパークで行った勝利演説シーンを完全再現した冒頭シーンは当然突貫作業によって作られたものとしても、それ以外のほとんどのシーンは本選挙前からオバマ勝利ありきで作業が進められたことになる。改めてサウスパークのニュース性と製作スケジュールのタイトさが窺える。

 

 オバマの勝利が報じられるや、サウスパークではランディらオバマ支持者たちが路上に出て馬鹿騒ぎ。ズボンを脱ぎ、ビールサーバーを持ち込み、信号機に上り、パトカーを引っくり返し、ところかまわずゲロを吐き、上司をぶん殴りながら「オバマ!」「チェンジ!」と叫ぶ。全部ランディーの仕業だが。

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大統領選当日の夜、アメリカではこれに近い騒ぎがあったという

 

 共和党支持者たちーーバターズの父親スティーブンやギャリソン先生、ビクトリア校長、マッケイさんら(学校の先生が多い)は「この国の終わりだ」「たぶん日の出まで死ぬ」と悲観し、町の外れにシェルター(箱舟)を掘って新政権による死の灰から逃れることに。
 ひとりカートマンは不在となった家々からテレビを盗んで売り歩いていた。

 

 一方、その頃、オバマとマケインは合流し、作戦の第一段階の成功を祝う。
彼らが10年前から計画した作戦とは、大統領選挙で全国民が浮かれている間に史上最大の強盗を企てるというもの。
 オバマとマケインをはじめとするチームの目的は、世界最高の防犯システムで守られたスミソニアン博物館から2億1千万ドルのホープダイヤモンドを盗み出すこと。二人はホワイトルーム執務室地下にある長さ3キロのトンネルを通りスミソニアン博物館に潜入するために大統領選に出馬したのだ。マケインの「ヒヤヒヤしたぜ。引き分けちまうんじゃないかと思ってよ」という台詞からも、どっちが大統領選に勝利してもよかったのだろう。
 チームにはマケイン陣営の副大統領候補サラ・ペイリンやミシェル・オバマ、大統領選前日に亡くなったオバマの祖母も合流し、『オーシャンズ11』をパロディーが展開される。

 

 マケインの敗北に悲観し、窓から飛び降りて足を怪我した弟を病院に連れて行くカイル。病院は急性アル中(→オバマ支持者)と自殺未遂によるケガ人(→マケイン支持者)でいっぱいだった。

 

 そして一夜明け。
 ダイヤを盗み出したオバマ一行は高飛びするため空港へ。飛行機が出る直前、オバマは仲間たちに「俺は強盗を引退する。大統領をやってみるよ」と告げ、ミシェルと共に再びホワイトハウスへ向かう。
 

 スティーブンらシェルターに避難した共和党支持者たちはその世界がまだあることに驚く。「つまり、過剰反応しすぎた?」「たぶん、オバマでも大丈夫だろう…」

 ひどい二日酔いで目覚めたランディに息子スタンが伝える。「会社、クビだって」。
ランディ「ちくしょう、なにが“チェンジ”だよ!あの野郎、だましやがって!マケインにしとくんだった!」