ハチミツをぶちまけているのは誰だ! 〜ルミネCMの説明過剰な演出について〜

ルミネが謝罪、YouTubeから動画削除したあとも、「女性差別」「セクハラ」とバッシングが治まる気配がない例の「働く女性を応援するスペシャルムービー」CM。

ぼくがこのCMの存在を知ったのはルミネが動画を削除した20日午後過ぎ。その頃ぼくはちょうど新宿ゴールデン街の文壇バーで、初対面の女性客に「初潮が来た日、赤飯を食べたか」について根堀り葉堀り訊く「研究」の真っ最中だったので、残念ながら話題の公式動画を見ることはできなかった。

とはいうものの、YouTubeには公式以外の動画がまだ残っていたので、バッシングを浴びている第1話は容易に見ることができた。

www.youtube.com

まあ、これは怒られて当然だよな。感想はそんなところである。「女性差別」「セクハラ」についてはすでに色んな人が発言しているのであえて言及しない。

 

それよりも、第1話と一緒にルミネが削除した第2話の動画が気になってしょうがない。「パート2」の宿命なのか、第2話は第1話に比べて注目されておらず、YouTubeを探してもなかなか見つけることができなかった。

やっと発見できたのが、これ。

www.youtube.com

(1:12〜)

ただ、この動画、サムネイル画像もそうだし、再生後しばらくはYouTubeアフィリエイトをすすめる広告動画が流れて、いかにもうさん臭い。動画を再生するのに二の足を踏んでいる人に向けて、スクリーンショットの画像と共にその内容を紹介する。

 

○居酒屋で社内の飲み会が行われている。主人公の視線の先には、第1話にも登場した巻き髪の「需要の高い」女性が男性社員に囲まれて楽しく飲んでいる。

f:id:bonnieidol:20150322162557p:plain

○主人公は自分の席に戻り、心の中でつぶやく。

(これが需要か......)

f:id:bonnieidol:20150322162718p:plain

○自分に話しかける人は誰もいない。と思ったら、隣の席の後輩とおぼしきイケメン社員がビールのお酌をしてきた。

f:id:bonnieidol:20150322162813p:plain

主人公「あ、ありがとう」

後輩「あの、西野さんって歴史好き、......なんですか?」

主人公「えっ!? なんで?」

後輩「ぼくも実は、歴史が好きで...」

f:id:bonnieidol:20150322162911p:plain

主人公「え、誰?」

後輩「真田、幸村とか」

主人公「信繁ねえ〜」

後輩「のぶ、のぶしげ?」

主人公「(うなづきながら)真田幸村の」

後輩(何て返したらいいかわからなくて困ってる)

f:id:bonnieidol:20150322163229p:plain

主人公「まだまだだねえ。」

主人公「ぁ、今度、本貸してあげる!」

後輩「ホントですか?」

主人公「うん」

後輩「歴史が好きな人、美人が多いって、ホントですね」

f:id:bonnieidol:20150322163046p:plain

主人公「(まくしたてるように)あの、やめてよ。私、中学時代、西郷隆盛西郷隆盛? あんなのに似てるって言われちゃって。何て言うんだろ、いや男じゃん」

f:id:bonnieidol:20150322163623p:plain

○第1話の「需要」同様、「自虐」についての説明画像。

f:id:bonnieidol:20150322163714p:plain

○再び居酒屋の場面。

主人公「眉毛とか書くと結構ごーんとかってなるし」

○映像に被せて、「変りたい? 変らなきゃ」の文字。

f:id:bonnieidol:20150322163933p:plain

○「ルミネも変わる」のキャンペーンを知らせる画像。

f:id:bonnieidol:20150322164006p:plain

○嬉しそうに帰り道を歩いている主人公。

主人公「あー、明日は何着てこう!」

f:id:bonnieidol:20150322164129p:plain

(終)

 

第1話ほどひどい内容じゃないと思う。これだけならそれほどバッシングを浴びることもなかったのではないだろうか。

そして、ストーリー的に連想したのは、昔の「サントリーオールド」のCM。長塚京三や田中裕子が出てた、あの頃の。

www.youtube.com

 

今見てもいいCMだと思う。中でも、最後の田中裕子の自転車を大森南朋が修理するバージョンは名作。

ルミネのCMもサントリーオールドの「恋は、遠い火の花火ではない。」シリーズも、テーマは同じ「恋に不器用な主人公がふとした出会いにときめく」。

ただ、サントリーオールドのCMが役者の演技や空気感で主人公のときめきを表現しているのに、ルミネのCMは演出が圧倒的に下手だ。

簡単にいうと、説明過剰。わざわざ「自虐」について文字で説明なんて野暮も野暮。範馬勇次郎風に言うなら、「上等な料理にハチミツをぶちまけるがごとき思想」なのである。

 

 

ただ、ハチミツをぶちまけているのはルミネCMに限ったことではない。バラエティ番組で笑いどころを知らせるテロップや、雑誌インタビューで発言の締めに使われる「(笑)」「(泣)」とかもそう。視聴者や読者に親切にしているようで、実は受け手をバカにしているだけ。そして、余計な注釈は演出力、文章力がありませんと言ってるようなもん。

 

ルミネCMはたしかに「女性差別」「セクハラ」と受け取られてもしょうがない内容だと思う。ただ、バッシングはコンセプトばかりに目が向けられてるけど、演出力がまともだったらこれだけ騒がれることはなかったんじゃないかと思った次第。

ちなみに、ルミネのCM第2話では同僚二人が歴史の話題で盛り上がっていましたが、冒頭言ったように、ぼくは「歴女」より、初潮の日に赤飯食べた「赤女」の方に興味があります。読者の皆さんからの情報をお待ちしております。