ドラマ『高校教師』(1993年版)レビュー「第3話 同性愛」
英語教師・藤村知樹(京本政樹)による相沢直子(持田真樹)へのレイプ事件、二宮繭(桜井幸子)が自分の婚約者をエスカレーターから突き飛ばし怪我をさせたことなどがあったことも知らず、
「昨日と同じように穏やかな日差しのなかで一日が始まりを告げ、僕のささやかな希望といえば、明日も昨日と同じように朝を迎えられる。ただ、それだけだった」
と呑気こいてる羽村先生(真田広之)。それでも、元同僚、教授の言動から「果たして本当に春から大学の研究室に戻れるのか?」という疑念が徐々に湧きつつあった。
一方、藤村先生からあの日の一部始終をビデオに録っていたことを知らされた直子。逃げ場所を求めるように辿り着いた体育館。
「ず、ずるずる。ぴちゃぴちゃ。ずーー。ごく」
音のするほうを見上げると、ひとり昼メシのラ王を食べている新庄先生(赤井英和)。
直子に気づいた新庄先生は声をかける。
「食べるか? ひとつ」
「たまに食べるの美味しいねん、俺はしょっちゅうだけどな」
自分の使っていた箸をペキっと折り、ラ王とともに直子に差し出す新庄先生。
そのラ王より温かい新庄先生のやさしさに泣き崩れる直子。
この回屈指の名シーンだ。
女子バスケ部の顧問として、日曜日に関わらず練習試合の対戦校の前で部員の到着を待ち続ける羽村先生。そこに現れたのは私服の繭ひとり。
「ダメだよ、私服で来ちゃ」
「日曜だから」
「日曜ったって、練習試合...またかよ?」
「みたいね」
しぶしぶふたりはカフェに入ることに。
繭の変顔3連発。
この後、羽村先生は婚約者の浮気現場の目撃を経て、冒頭の「明日も昨日と同じように朝を迎える」というささやかな希望に陰りが生じていることを自覚する。
しかし、繭の告白ーー婚約者を突き飛ばしたこととその理由、を聞いても頑に現実から目をそらす羽村先生。
「やめろ! それ以上言うな。言わないでくれ。俺は何も聞かない。何も見なかったんだ」
繭のエキセントリックな言動や、変顔、そして「やっと笑った」と言いながら羽村先生の口元を拭いてあげる姿は、その後木っ端みじんに希望を打ち砕かれる羽村先生に寄り添う母親のようだ。