生駒里奈 マネキンのまばたき(前編)
2012年12月19日にリリースされた乃木坂46の4枚目シングル「制服のマネキン」ミュージックビデオ。
レーザービームが交差する体育館のフロアをメンバーの作る花道から生田絵梨花、星野みなみに続いて、淡々とした歩調で進んでくるセンターの生駒里奈。
それまでやや上からの位置でメンバーを捉えていたカメラが正面にスイッチ、このときのレンズがズームする動きと生駒里奈の長いまばたき、そしてバックで踊っているメンバーの動から静への動き、そして生駒が目を開くのが合図だったかのように再び動きを始める制服のマネキンたち。
「制服のマネキン」MVは、他の乃木坂46の楽曲MVと同様、2015年12月に乃木坂46のミュージックビデオ集『ALL MV COLLECTION〜あの時の彼女たち〜』が発売されるまでYouTubeで普通に視聴することができたが、現在では冒頭の2分弱の「Short.Ver.」に差し替えられている。
フルバージョン公開当時、「制服のマネキン」MVは乃木坂46の楽曲MVの中でYouTube再生回数の最多を誇り、Short.Ver.に差し替えになる直前の2015年11月の時点で1200万回を超えていた。
1200.9万 制服のマネキン
620.7万 何度目の青空か?
592.7万 ガールズルール
579.2万 君の名は希望 DANCE&LIP
454.4万 命は美しい
432.9万 気づいたら片想い
431.6万 夏のFree&Easy
388.4万 世界で一番孤独なLOVER
341.8万 バレッタ
327.5万 ロマンスのスタート
319.7万 おいでシャンプー
264.3万 シャキイズム
259.9万 走れ!bicycle
227,1万 そんなバカな
214.8万 太陽ノック
212.2万 13日の金曜日
資料出典元→
【乃木坂46】『MV別再生回数』をまとめてみたけど『制服のマネキン』やばいなw : 乃木坂46まとめ 乃木仮めんばー
2位の「何度目の青空か?」にほぼダブルスコアという数字からも、「制服のマネキン」MVは他の乃木坂46の楽曲MVとは一線を画す魅力を備え、乃木坂46ファンを超える魅力を備えているといえるだろう。
テクノ調のダンスナンバー、セーラー服姿でありながら大股になり、床を蹴り、あぐらを組む振付け。「恋をするのはいけないことか」と問いかける無表情のアイドルたち。
そのすべてにおいて「制服のマネキン」はそれまで乃木坂46がリリースしたフレンチポップ路線の楽曲と、メンバーの持つかわいさ、清純さを前面に出した3rdシングルまでのMVとは真逆のアプローチだった。
乃木坂46のMVは大きくダンス&リップシンク(「ぐるぐるカーテン」「夏のFree&Easy」「インフルエンサー」など)、ドラマ仕立て(「おいでシャンプー」「バレッタ」「何度目の青空か」など)、ドキュメンタリー仕立て(「君の名は希望」など)の3種類に分けることができる。また、それらの複合で構成されている作品も少なくない。
それらMVは、プロモーションという目的だけでなく、楽曲の世界観を補完する働きを兼ねている。
「恋愛禁止」を謳っているアイドルに「恋をするのはいけないことか」と歌わせるのは秋元康の過去からの仕事を振り返ると常套手段、専売特許だ。そこに目新しさはない。
「制服のマネキン」という一見ありふれたアンチテーゼを歌ったダンス&リップシンクのみで構成されている楽曲MVがYouTube再生回数1200万回を誇った要因。
それは、世界観を補完するだけでなく、メッセージソングから物語(フィクション)への変換がなされたからではないだろうか。
その物語のリアリティレベルを上げる大きなピースとして、生駒里奈の存在抜きには語れない。
冒頭の生駒里奈の長いまばたきは、楽曲が物語としての扉を開くきっかけであり、彼女自身にとっても表現者として目覚めた瞬間でもあった。
(続く)