サウスパークが描いてきたアメリカ大統領選②2004年ブッシュ対ケリー
ジョージ・W・ブッシュがジョン・ケリーを下し再選を果たした2004年の大統領選挙から遡ること6日前、2004年10月27日にシリーズ8・エピソード8「Douche and Turd」(日本語題「小学校のマスコット論争」)は放送された。
前回は幼稚園の学級委員選だったが、今回は主人公たちが通うサウスパーク小学校の新しいマスコットを決める選挙を通して選挙に投票する意味と無意味さを描いてみせた。
サウスパーク小学校ではチアガールとマスコットの牛による「カウズ」がフットボールチームの応援パフォーマンスを行っていた(※1)。そこへ過激な動物愛護団体「PETA」が「無神経に牛を扱っている」と乱入してくる(※2)。
※1 サウスパークのあるコロラド州では畜牛は主要産業のひとつ
※2 PETAが生徒たちに赤い液体をバケツでぶっかけていた描写には元ネタがあり、2000年のファッションショーでPETAはランウェイに向かって赤いペンキを投げつけている
PETAの攻撃を避けるべく、学校ではカウズに変わる新しいマスコットを決める選挙を行うことに。
学校側が用意した新しいマスコット候補に納得がいかないカイルは新候補として「巨大浣腸」を提案する。するとカートマンが「もっと面白いのがある。糞サンドイッチだ!」と対抗する。巨大浣腸と糞サンドイッチはマスコット選挙の最終候補となり、両陣営は選挙キャンペーンを繰り広げる。
カイルは親友のスタンにも巨大浣腸への投票を促すが、スタンは「どっちもバカげてる」と投票の棄権を宣言する。
スタンが選挙で投票しないと聞いた両親は息子を問いつめる。「投票するのが意味がないだと?」「投票権を持つまで何人が犠牲になったと思ってるの」
両親までもが巨大浣腸と糞サンドを巡って争うなか、「投票の重要性を理解していないだと?」とラッパーのパフ・ダディ(現・ショーン・コムズ)がブラザー数人を引き連れてやってくる。(※3)。
※3 パフ・ダディは2004年大統領選前、若年のマイノリティ層の投票率を上げるため“Vote or Die”キャンペーン活動を展開していた
パフ・ダディに銃で脅されたスタンは渋々投票を行う。その姿にカイルは「下らないと思っているかもしれないけど、その1票は重要なんだよ」と一旦は歓迎するが、スタンが糞サンドに投票したのを見るや、「こっちに入れるんじゃないのかよ、友達だろ」と詰る。
パフィ・ダディをけしかけるカイルにスタンは「俺の投票の意義じゃなくて、自分の得票目当てかよ」と呆れる。パフィ・ダディの選挙促進キャンペーンも結局はブッシュを再選させないためにやったんだろ、と皮肉った描写だ。
「俺は誰の支持も受けない。投票の強要なんてまっぴらだ。投票しない、これが答えだ」
改めてそう宣言するスタンに、大人たちはサウスパークからの追放という処置を下す。
住民一人ひとりに服を破られ、ツバをかけられた挙げ句、頭からバケツを被らせて馬に乗って町を追放されるスタンの姿は、映画『マッドマックス サンダーロード』のパロディだろうか。
さまよったスタンが辿り着いたのは、PETAが動物と共生するコミューンだった…。
このエピソードでは「与えられた巨大浣腸と糞サンドを選ぶ権利を行使する大切さ」を悟ったスタンだったが、エピソード20では再び「なぜ4年ごとにクソガチャを回すのか意味がわからない」と冷えきった名言を吐くことになる。