サウスパークが描いてきたアメリカ大統領選①2000年ブッシュ対ゴア

 アニメ『サウスパーク』がアメリカ大統領選を初めて描いたのは、2000年11月15日放送のシリーズ4・エピソード12「Trapper Keeper」(日本語題「カートマンズ・クリークの秘密」)だった。

 

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 エピソードのメインストーリーは、カートマンの自慢の書類フォルダ“ドーソンズ・クリーク スーパーウルトラ書類フォルダ2000”が近い将来ターミネーターのごとく邪悪な意思を持ち人類を脅かす存在になるのでその前に破壊しなければならない、というものだ。『ドーソンズ・クリーク』とは放送当時アメリカで人気だったTVドラマ。タイトルのトラッパーキーパーは80〜90年代にアメリカの子供たちの間で流行ったルーズリーフや筆記具が収められる文具フォルダ。日本だと同じく80年代に流行った多機能筆箱がそれに近いかも。

 

 大統領選をモチーフとしているのはこちらのストーリーではなく、サブストーリーの方。
 暴走を始めたドーソンズ・クリーク スーパーウルトラ書類フォルダ2000を主人公の4人が必死に食い止めている頃、カイルの弟・アイクは飛び級で幼稚園に入り、担任のギャリソン先生の推薦で学級委員の候補に選ばれる。
 アイクと対抗馬のフィルモアの学級委員選は園児たちの投票の結果6対6となり、勝敗は最後まで「どっちに入れたらいいかわかんな〜い」を繰り返していたフローラの1票に委ねられる。フローラはアイクに投票し勝敗が決したと思われたが、フィルモア側から再集計を要求される...。

 

 エピソードのあらすじはこんなところだが、では実際の共和党候補ジョージ・W・ブッシュ民主党候補アル・ゴアで争われた2000年アメリカ大統領選挙はどのような経過を辿ったのだろうか。
 11月7日、投票当日の開票時点で獲得した選挙人はブッシュが246人に対してゴアが255人の大接戦となり、勝敗は25人の選挙人枠を持つフロリダ州の開票結果に委ねられた。つまり、サウスパークで最後までどっちに投票しようか悩んでいたフローラはフロリダ州ということだ。
 翌8日にはフロリダ州でのブッシュ勝利(1784票差)が報じられ、ゴアはブッシュに当選祝いの電話をするも、得票差が再集計が求められる0.5%未満だったためゴアは当選祝いを取り消す電話を入れる。
 超僅差ながらもブッシュ優勢で再集計が進むと、ゴア陣営は民主党支持者が多い4つの群に対して集計ミスが発生する機械作業ではなく手作業による再集計を求める。ゴア票の追い上げを防ぐためブッシュ側は手作業の中止を求めて訴訟を起こす。ここから大統領選は手作業集計の是非を巡って法廷へとリングを移す。
 連邦裁判所が判決を下した翌日の12月13日、ゴアは敗北宣言を行う。投票日から36日が経過していた。

 

 つまり、「Trapper Keeper」放送日の11月15日はおろか、シリーズ4の最終話が放送された12月20日にもまだ大統領選の結果は出ていなかったのだ。
 サウスパークの学級委員選の結果は子供たちの次の言葉で落ち着く。
フィルモア「もう、ぼく降りるよ。もうこの遊び飽きちゃった」
女の子「そうよ、なんかバカみたい」
アイク「うんち出ちゃったー」

 このエピソードでは園児の要求で票を106回数え直したり、“アメリカ版女みのもんた”のロージー・オドネルにしゃしゃり出られたりと散々振り回されたギャリソン先生だったが、この20年後には自分が大統領の再選を巡って国民を振り回すことになる。