ランチジャー本出版への道〜その1
ぼくは今、ランチジャーを10コ所有している。
これまで購入したランチジャーは全部で11コなんだけど、去年の2月、「いやげ物展」のサイン会でみうらじゅんさんにプレゼントしたため、現在持っているのは10コというわけである。
「なんでそんなに持っているんだ?」という疑問や「そもそもランチジャーって何だ?」というランチジャービギナーの方は、ヒマなときにでもランチジャー入門編として以前ぼくがWebマガジン「ヒビレポ」に書いたコラムを読んでいただけたらと思う。
今朝はボニー・バック 第3回「ランチジャーの逆襲①」
http://www.repo-zine.com/archives/1545
今朝はボニー・バック 第4回「ランチジャーの逆襲②」
http://www.repo-zine.com/archives/1615
今朝はボニー・バック 第5回「ランチジャーの逆襲③」
http://www.repo-zine.com/archives/1841
今朝はボニー・バック 第20回「ランチジャー、再び」
http://www.repo-zine.com/archives/6195
今朝はボニー・バック 第25回「器の大きさについて」
http://www.repo-zine.com/archives/6903
最後の「器の大きさについて」はランチジャーに触れているのは冒頭のみで、ほとんどが与太話なんだけど、その中でなかなか興味深いことをぼくは言っている。
さて、今回はランチジャーの話ではなく、ぼくがランチジャーにこれほど惹かれる理由についてだ。それは、ぼくがランチジャーの「器の大きさ」に憧れているからに他ならない。
この器の大きさというのは、ランチジャーの、何ごとにも微動だにしない泰然とした様子と、平均、お茶碗3杯分を誇るランチジャーの大容量にかかっていることは聡明な読者諸兄には言わずもがなだろう。
また、「ランチジャーの逆襲③」では、なぜぼくが2010年代の現代にあって、高度経済成長期の遺産とも言えるランチジャーをこれほどまでに推すのかについては次のように説いている。
たしかにランチジャーが、現代の「軽・小・短・薄」がイイとされる時代にそぐわないことはぼくも百も承知だ。さらに、最近では、これに「容量」が加わる。
「それって、何ギガバイト?」こんな会話が学校の教室、会社、電車の中、飲み屋・・・・・・、ありとあらゆる場所で交わされている。モノの価値を容量でしか判断できないつまらない時代だ。
しかし、そんな奴らにはこう言ってやれ。
「飯容器の容量なら、1.8合分です!」と。
かつてキヨシローは「♪昼間のパパはいい汗かいてる 昼間のパパは男だぜ」(「パパの歌」)と、また「♪昔小さかったパパの手は今はすっかり大きくなって いろんなことをしています ビルを建てたり橋をかけたりしています」(「パパの手の歌」)と歌った。
忌野清志郎 「パパの手の歌」 清水建設 【Respect】 - YouTube
この二曲を耳にするたびに、ぼくはパパに寄り添い、働く活力を与えているランチジャーを思い浮かべるのである。
さて、ぼくは去年、ランチジャー生誕50周年にどうしても「ランチジャー本」を出版したくて、企画書を持って7社ほどの出版社に売り込みをした。結果はまあ言わずもがなで、中には塩こそ撒かれなかったものの持っていった企画書を突っ返す編集者までいた。
セブン&アイ出版のKとのやり取りは日を改めて映画化することにして、去年の営業回りが失敗に終わった時点でぼくはランチジャー本の出版は諦めてしまった。生誕50周年の節目に出せない本が翌年以降に出せるわけがない。
ところが、ある日ネット検索をしてたら、某ページに「ランチジャーが発売されたのは1965年」という記述を発見したのである。つまり、開発は第1回東京オリンピック開催や東海道新幹線開通と同じ1964年だが、一般に発売されたのは翌年の1965年だというのだ。
この真偽は後日しっかりメーカーに問い合わせて明らかにするとして(実際、開発をしたG社に問い合わせたが、担当者からは「わからない」という返事だった)、今ぼくがすべきことは「真」の方に望みをかけ、ランチジャー本の出版を目標にキャンペーンを張ることのみ。
というわけで、本日よりぼくが所有しているランチジャーをひとつひとつ見せびらかしながら、その魅力や歴史、新たな発見を紹介していきたい。中には「ヒビレポ」で一度紹介済みのランチジャーもあるかと思いますが、ご勘弁ください。
〜ランチジャー自慢①タイガーランチジャー 大名弁当 LJL-1700〜
記念すべき一発目は、昨年6月にヤフオクで落札したタイガーの「大名弁当」。
1970年代製のデッドストック未使用品。フタの真ん中のロゴのトラも当然、今とは違う昔のデザイン。
収納されているのは、おかず容器、ご飯容器、スープ容器の標準装備に加え、フリーケース、箸箱、ガラス魔法瓶水筒、調味料入れ(×2)の豪華7点。
あえて難を挙げるとすれば、肩に背負うタイプでなく、持ち手をつかむ手提げタイプなことだろうか。やっぱり男はランチジャーを肩で背負って現場に向かいたい。
ただ、大容量こそが正義、のランチジャーにとって、いちばんの目安となるのはご飯容器の容量。「大名弁当」はアイテムが多く母艦に収納されるスペースが限られる中、ご飯容器は670mlと70年代製にしてはかなりのサイズ。ぎゅうぎゅう詰めにすれば、お茶碗3杯分の白飯は入るだろう。
先ほども書いたように、ぼくはランチジャー大容量派なので、国内の二大ランチジャーメーカーの象印とタイガーでは象印の製品を多く所有している。
というのも、これはぼくの勝手なイメージなのだが、ギターメーカーで喩えるなら、重く音がぶ厚いギブソンが象印で、軽くシャープな音を出すフェンダーはタイガーと認識していたのだ。
実際、ヤフオクに出品されているデッドストック品やAmazonで販売されている現行品を見ても、ぼくの目に留まるのは容量が大きい象印の製品だった。
「たしかにデザインは良いんだけどねえ...」
というのがぼくのタイガー製品に持っていたイメージだったが、「大名弁当」を発見してからは認識を変えざるを得なかった。
ネーミングのとおり、大名が持つに相応しい容量と装備品。ギターを初めて買ったはいいが、ピックアップやツマミが多すぎてどうイジっていいのかわからない。そんな戸惑いすら感じさせる。
中でも筆箱型の「フリーケース」は“フリー=自由”なだけに何を入れたらいいか迷ってしまう。説明書には「味付け海苔やおしぼりを入れるのに最適です」とあるので、きっと最適なんだろう。
現在売られているランチジャーのほとんどは円筒型である。それは、保温機能を担う中の材料がガラスからステンレスに変り、変形しやすくなったことで省スペース化、軽量化が叶えられた結果だ。
一方で、かつての「省スペースなんか糞喰らえ、これしきの重さのランチジャーを持てねえモヤシ野郎に用はねえ」と言わんばかりの旧ランチジャーも懐かしい。
要るのか要らないのかはさておき、とりあえずアイテム数多ければお客は喜ぶハズ。そんなメーカーの太っ腹が支えた大容量、重装備時代を象徴するのが今回紹介したランチジャー、「大名弁当」である。