「乃木坂46 握手会へ行こう! -メッチャ攻略ブック」TEXT担当の告白

11月25日(火)に発売された単行本「乃木坂46 握手会へ行こう! -メッチャ攻略ブック」(アールズ出版)。発売から一ヶ月経った12月2日現在、ありがたいもので一部ネット書店で売り切れ状態となっているなど、好評をもって迎えられているようだ。

奥付を見てもらうとわかるように、ぼくはこの本の“TEXT”担当となっている。もう少し具体的に何をしたか説明すると、乃木坂46全メンバーの握手会マニュアル文のライティングを行ったのだ。

と言うと、「よっぽどボニーさんはアイドル(乃木坂46含む)について詳しかったんだなあ」と思われてしまうかもしれないが、ぶっちゃけると、9月26日にアールズ出版のSさんから「乃木坂46に関する企画本のライターを探しています。やっていただけないでしょうか?」という内容のメールをもらうまで、乃木坂のことは何一つ知らなかった。

知っていたのは、乃木坂46AKB48の公式ライバルであるということだけ。メンバーの名前も曲名も本当にまったく記憶にございませんのロッキード式暗記術。東京に住み始めて10年以上なるのに、乃木坂が渋谷区にあることすら知らなかった。

とりあえず、最初の連絡が来た日と同じ週内に、アールズ出版がある水道橋の喫茶店で打ち合わせをすることになったのだけど、打ち合わせに行く前の段階からぼくは「この仕事、引き受けよう」と決めていた。フリーになってからのモットー「来る仕事拒まず」に従ったのだ。

打ち合わせが終わると、Sさんはぼくに「今度の土曜日、握手会があるんですけど、参考のために行きませんか?」と誘ってきた。会場は幕張メッセで、あとから知ることになるのだけど、それは9thシングル「夏のFree&Easy」の全国握手会だった。午前中は別の仕事が入っていたので、「午後からなら」と返事をした。

そして、当日昼13時半過ぎだったか。幕張メッセのメインホール入口でSさんと落ち合ったぼくが最初に驚いたのは行列を作っているファンの数。30分以上は握手会場外の廊下で順番待ちをしたはずだ。

その間、Sさんは乃木坂46に関する基本知識――AKB48と違い、乃木坂46には選抜メンバーを決めるための“選挙”というシステムがなく、運営が独断でメンバーのポジション含め決めていること、そして劇場を持たない乃木坂46メンバーにとって、握手というのは自分をアピールする数少ないチャンスの場であり、多くのファンを獲得することで選抜入りにつなげるための戦いの場であること――などを教えてくれた。

そんなことよりも、ぼくが気にしていたのはどのコのレーンに並ぶかだった。全メンバー、名前はおろか顔さえ知らない。しょうがないので、公式HPのメンバー紹介ページを見ながらルックスだけで選ぶことにした。

ぼくはショートカットが好きなので、「生駒里奈」と「橋本奈々未」というコのどっちかにしようと思った。どっちもかわいかったし、今となっては何が決め手になったのは忘れてしまったが(たぶん、Sさんの「生駒は5thシングルまでセンターを務めた、言わば"乃木坂の顔”のような存在です」という一言だったような気がする)、最終的には生駒里奈と握手することに決めた。

Sさんに握手券を渡され、会場に入り、ボディチェックをし、「生駒里奈堀未央奈レーン」(全握はぺアだったのだ)に並ぶこと10数分後、ぼくの番がやってきた。

二人の第一印象について、堀さんのことはほとんど記憶にないけど、生駒さんのことは「最近まで好きだった人に似ているなあ」と思ったことを憶えている。

どちらの情報もまったくなかったので、最初の堀さんにも次の生駒さんにも、Sさんからのアドバイス通り「初めて来ました。応援してます」と同じことを語りかけた。それに対する二人の返事はどちらも「ありがとうございます」だったような気がする。握手した時間は正味3秒ほどだったと思うが、間が保たなく、やけに長く感じられた。横についている“剥がし”と言われているガードマンに引き離される前に自分から手を離してしまったと思う。

握手会を無事終え、幕張メッセから海浜幕張駅までの道中、Sさんがぼくが握手した生駒さんに関する補足情報を語り始めた。

「生駒ちゃんって秋田出身で、高1の時、乃木坂のオーディションに合格して上京してきたんですよね。それだけに、シンデレラとしての物語性を持っているんです」

えー!? 秋田って、オレと田舎おんなじじゃん! Sさん、そんな大事なこと、握手する前に言ってよ。そしたらもっと弾んだトークになったはずなのに。

たぶん、というか間違いなく、この時点でぼくは乃木坂46(もっと限定すると生駒ちゃん)にハマってしまったのだろう。まったく知らなかったグループアイドルが少しだけ身近なものになった。

それから一週間後、ぼくの乃木坂46全メンバー握手マニュアル文執筆の火ぶたが切って落とされた。

ライティングは、Sさんから渡された各メンバーごとの資料(乃木坂が結成されてから現在に至るまで雑誌、ネットに掲載されたほとんど全ての記事、冠番組『乃木坂って、どこ?』『NOGIBINGO』、公式HPから見れるネット番組『乃木坂って、ここ!』他、これまで出演してきたテレビ・ラジオ番組のアーカイブ)と、Sさんがヲタさんたちにインタビューし作成した推しメンに関する握手レポート(テープ起こし原稿)をもとに行った。

文章の構成としては、前半でそのコがどんなキャラ(性格、趣味趣向)で、これまでどんな活動をしてきたかのプロフィール紹介。後半ではそのキャラが握手ではどんな風に生かされているか、またはギャップがあるかを実際に推しメンと握手しているヲタさんたちの会話を通して紹介し、どんな対応をしたら喜んでもらえるか、“認知”(自分の顔や名前を憶えてもらう)をもらえるかの攻略マニュアルを挙げて結ぶという流れだ。

最初はトライアウト記事を兼ねて、“天性の釣り師”こと秋元真夏の資料をどっちゃり渡され、一本目の原稿としてまとめた。Sさんは可もなく不可もなくまとまっていると判断したのだろう。それから本格的に仕事を注文する体制に入り、週に2日ほど手渡しまたは郵送でメンバーごとの資料&握手レポートを受け取り、原稿としてまとめる、の繰り返し。

ライティングが半分ほど終わった辺りだろうか、ぼくはすっかり乃木坂46が好きになっていた。

「乃木坂って、ファン以外からは私立の女子校に通う、清楚で大人しいグループのように思われている(事実、結成初期にはよくキャッチコピーで使われていた)けど、全然そんなことないじゃん。

どのコもみんなそれぞれキャラ持っているし、中には大人しいとは程遠いメンバーもいる。そう、実際は水滸伝並の豪傑ゾロリだったのだ。彼女たちを知れば知るほどひとりひとりへの思い入れは日増しに高まり、渡される資料以外のものを発掘して彼女たちの魅力をプロデュースするよう努めた。

特に、同じ秋田出身の生駒ちゃんの原稿は思い入れはハンパなく、2000文字の指定を大幅に上回って5000文字以上書き綴った。初稿を読み返してみると、ただの推しが書いた生駒里奈に関する論文である。Sさんに、「最近のボニーさん、乃木坂が好きになり過ぎて原稿がほとんどアイドルヲタの視点ですよ。もっと彼女たちから引いて、女子校の担任になったつもりで批評してください」と注意されたのはこの頃である。

しかし、25名ほどのマニュアル文を書き終えた頃にはそれまでの熱が冷めてきた。あまりにも短期間で情報を詰め込み過ぎたせいで乃木坂46に食傷気味になってきたのだ。

ぼくのやる気を再び引き戻してくれたのは、まだメディアに登場する機会の少ない2期生たちの存在だったと思う。Sさんから渡される資料、握手レポートは1期生たちに比べてはるかに少なかったが、その分、なんとか魅力を見つけようとブログを漁ったり、ヲタさんとのレポートから彼女たちのキャラクターを分析したりしながら、1期生に負けないような、原石に光を当てるページにしようと心がけた。今振り返っても、2期生のブロックは他よりも伸び伸びと書けてると思う。

10月下旬には40名全てのマニュアルページを書き終えたが、前半分と後半分ではメンバーへの温度差がやけにあるなあと感じたので、最初に着手した真夏さんやキャプテン桜井玲香などの原稿は大幅に書き直して全体のテンションを揃えた。

Sさんから初稿ゲラを渡されたのは11月4日。ゲラを見ると、ぼくが書いた原稿に加筆や削除といった修正が施されているものも少なくなかったが、ひとりひとりのメンバーのキャラクターを絞り、読みやすくするという意味では納得できる手直しだった。それよりも、ぼくがメンバーの紹介のためにぶっ込んだプロレスネタやタモリネタ、くだらないギャグがほとんどそのままの形で採用されていることが嬉しかった。

まる一日かけてゲラを丹念に読み、朱字を入れた。それでも、初版本の堀ちゃんのページ冒頭に「8thシングルで大抜擢云々」と大チョンボをおかしているが。

ゲラを戻してから2週間後、Sさんから著者献本が送られてきた。

ぼくが乃木坂46を知り、原稿を書き、この本が完成するまで約ひと月半。

握手マニュアル本のテキスト担当と言っても、詳細な資料を提供し、的確な指示と修正を施してくれたアールズ出版のSさんや各メンバーの握手対応を伝えてくれたファンの方々の協力なしではとてもここまで辿り着くことはできなかった。

一夜漬けを40日間繰り返したような乃木坂ファンの駆け出しも駆け出し、そば屋で言えば出前持ちが書いたような「乃木坂46 握手会へ行こう! -メッチャ攻略ブック」だけど、長く応援してきたファンはもちろん、ひと月半前まで何にも知らなかったぼくと同じような人にとって、乃木坂46の入口になってもらえればこんな嬉しいことはないっス。

そして、来年こそは紅白出場へ!

 

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