乃木坂46「シャキイズム」MVとビートたけしの言葉

「シャキイズム」(2013.3.13リリース『君の名は希望/Type-A』収録)のミュージックビデオ(MV)は、乃木坂46のドラマ仕立てのMVの中でいちばん好きな作品だ。

 

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〜あらすじ〜

レーザー光線により男子と女子が分離された学園。

主人公の冴えないオタクっぽいメガネ男子(生駒里奈)は、クラスメートで窓際の席に座る女子(星野みなみ)が気になっている様子。星野は学園のマドンナ的存在らしく、授業中にも関わらず他のクラスの生徒(桜井玲香)が告白に来るほどである。

告白を終えた桜井は、レーザー光線で仕切られた教室の“女子側”に足を一歩踏み出す、すると瞬時に目の前に巨大な壁が現れ、桜井は学園を裏で仕切る風紀委員(生田絵梨花橋本奈々未秋元真夏若月佑美深川麻衣ら)に連行されてしまう。恋敵の告白から連行されるまで、生駒はただ呆然と見ていることしかできなかった。

その後、生駒は体育の柔道で風紀委員のリーダーである生田に、風紀委員の恐ろしさを知らしめるためのモルモットのように投げられまくる。レーザー光線の向こう側にいる星野の目の前で。

 

柔道の仕打ちがよっぽど悔しかったのか、生駒はクラスメートで不良の白石麻衣と手を組み、風紀委員の監視を妨害して一矢報いる。

白石は人知れずクラスの女子・松村沙友理とレーザー光線越しの恋愛をしており、二人の障害となっている風紀委員に対しては前から思うところがあったのだろう。

ちなみに生駒と白石は学園に入ってからはそれぞれ別グループに別れてしまったが、元々は幼なじみのような雰囲気だ。

 

学園に平和が訪れたのかのように思えたある日、白石は松村と金網越しに校内デートをしているところを風紀委員に見つかってしまう。果敢に立ち向かっていく白石だったが、生駒が駆けつけたときにはひとりでは立ち上がれないほどの体になっていた。

やりきれない思いが爆発した生駒は親友の仇をとるべく、教師(演・嶋田久作)から特訓を受ける。

生田との再戦の日、生駒は金網越しに星野に自分のメガネを渡し、戦いの場へ向かっていく…。

 

 

長々とあらすじを書いたが、監督・柳沢 翔氏は「シャキイズム」MVのテーマについて「好きならもっと本気で来いよ草食男子!!」と述べている。

(雑誌『MdN EXTRA Vol.3 乃木坂46 映像の世界』より)

 

そう、「シャキイズム」MVは、好きな女の子を振り向かせるため男の子が頑張る、というハイコンセプトな作品だ。

 

戦いの前、なぜ生駒は星野に自分のメガネを星野に渡したのか?

生田との決闘は白石の仇をとるためであって、星野とはなんの関係もない。星野だって、風紀委員が仕切る学園内の空気に多少の息苦しさは感じているだろうが、誰かから“救ってもらいたい”という気持ちほどはないだろう。

生駒にとっては、風紀委員の横暴をなくせば、その後の星野との恋愛もスムーズに運ぶかもしれないが、星野とうまくいくなんて保証はない。

ではなぜ生駒はメガネを星野に渡したのか。

それは、生駒にとって星野は自分の成長をいちばん見てもらいたい相手だったからだ。

 

ビートたけし言うところの、

「どんなに、てめぇが、小っちゃくても星くずだろうが、この人にだけは届かせようと一生懸命輝くこったよ」

「それが出来なきゃな、男の子じゃないよ」

浅草キッド著『お笑い 男の星座』より)

 

である。

 

ぼくはこのテーマが描かれる作品に弱い。

たとえば、漫画『ダイの冒険』のポップ。

マアムに「好きだ」と言うつもりだったのに、口から出たのは「すばらしい仲間だと思ってんだからさ」。

いまの自分には「好き」と言う資格すらないと自覚し、次会う日までもっともっと強くなろうと誓うポップにぐっとくる。

 

そして、「シャキイズム」の星野同様、弱い「生駒くん」が思いを寄せる女性の観察眼はいつだって正確だ。

たとえば、ドラマ『輝く季節の中で』における篠原涼子

落ちこぼれ医大生の自分に何かと世話を焼いてくれる仲間の篠原に、中居正広

「お前さ、なんだかんだ言ってオレに惚れてるんじゃないの」と口走ってしまう。

篠原「もうちょっと樋口くんが強かったらね」

この言葉には中居も「…そっか。そうだよな」と苦笑しながらも認めてしまうしかない。

 

 

「シャキイズム」MVは、見事戦いに勝利した生駒の顔に星野が預かっていたメガネをかけてあげるシーンで終わる。

 

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星野の、

「うん。よくがんばったね」

という台詞はないけど表情とも相まって、いつだってなんだって女の子はお見通しなんだな、と改めて気づかされる。